ビジネス会計検定と簿記検定は、どちらも会計に関する資格ですが、内容や目的、難易度には明確な違いがあります。これから勉強を始める方の中には、「どっちを先に取るべき?」「何がどう違うの?」と迷っている方も多いのではないでしょうか。
私は日商簿記3級とビジネス会計検定の3級と2級を取得できました。
本記事では、ビジネス会計検定と簿記の違いをわかりやすく解説し、どちらを先に勉強すべきか、あなたに合った選び方までご紹介します。
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ビジネス会計検定とは

ビジネス会計検定とは、企業の財務諸表を正しく読み解き、経営分析や意思決定に役立てる知識を問う検定試験です。主催は大阪商工会議所で、3級・2級・1級の3段階に分かれています。
ビジネス会計検定3級では、主に次の3つの財務諸表の見方を学びます。
- 貸借対照表(B/S):企業の財政状態を示す表
- 損益計算書(P/L):収益と費用の関係から利益構造を分析
- キャッシュフロー計算書(C/F):現金の流れを把握し、資金繰りを分析
簿記のように帳簿をつけたり仕訳をしたりするのではなく、「数値を読む力」「分析する力」が求められるのがビジネス会計検定の特徴です。
このように、ビジネス会計検定3級は「会計を読む力」に特化した資格です。簿記とは異なる角度から会計知識を身につけられるため、営業職や企画職、経営者・投資家など幅広い層におすすめです。
ビジネス会計検定3級合格のメリット
ビジネス会計検定3級に合格することで得られるメリットは以下の通りです。
- 財務諸表を読み解くスキルが身につく
会計初心者でも、企業の決算書から経営状態や収益性、安全性を読み取る力がつきます。 - ビジネスの数字に強くなり、会議や資料作成で説得力が増す
営業職や企画職、管理職の方にとって、数値を根拠に提案ができるようになるのは大きな強みです。 - 株式投資や企業分析に役立つ会計リテラシーが向上する
IR資料や四季報を読み解く力がつくため、個人投資家にも非常に有用です。 - 就職・転職で会計知識をアピールできる
特に文系学生や未経験からビジネス職を目指す社会人にとって、エントリーシートや面接での強力な武器になります。
ビジネス会計3級の勉強方法
ビジネス会計検定3級の効果的な勉強方法は以下の通りです。
- 公式テキストで基礎知識をインプット
まずは大阪商工会議所発行の公式テキストを一読し、「財務三表」の構造や意味を理解しましょう。初学者向けに丁寧な説明がされているため、無理なく読み進められます。 - 会計用語や数字の見方に慣れる
資産・負債・純資産・収益・費用などの基本用語を正確に把握することが重要です。図表や例題を活用して、数値の変動から経営判断がどう変わるか考えるクセをつけましょう。 - 過去問題や模擬問題でアウトプット重視の学習
本試験と同形式の問題演習を通じて、時間配分や設問パターンに慣れましょう。特に数字を読み取って答える「計算問題」や「指標分析問題」は繰り返し練習が必要です。 - スキマ時間を活用してオンライン学習も活用
まとまった勉強時間が取りにくい方は、動画講義やスマホ対応の教材を活用するのもおすすめです。
より詳しいビジネス会計検定3級の勉強方法はこちら
ビジネス会計3級のおすすめ教材
ビジネス会計検定3級の学習には、公式教材を中心に、次の書籍・講座が特におすすめです。
『ビジネス会計検定試験 公式テキスト 3級』(大阪商工会議所)
検定試験の出題範囲に完全対応。財務諸表の基本から実務への応用まで、やさしく丁寧に解説されています。はじめて学ぶ方に最適の1冊です。
『ビジネス会計検定試験 公式問題集 3級』
実際の出題傾向を把握するには、過去問演習が不可欠。この問題集には本試験と同様の形式で出題された過去問題と詳しい解説が収録されており、得点力を高めるのに最適です。
弥生カレッジCMCの「ビジネス会計検定講座」
ビジネス会計検定3級無料講座→こちらから
無料で学べるオンライン講座。スキマ時間で学習できるため、通勤中や家事の合間に学びたい方に最適です。非常にざっくばらんな講義でおすすめです。
簿記検定とは

簿記検定とは、企業や個人事業主が行う日々のお金の出入り(取引)を記録・整理・集計するスキルを問う資格試験です。取引の内容を「仕訳」として帳簿に記録し、決算書類を作成するまでの一連の流れを学びます。
中でも最も有名で信頼性が高いのが、日本商工会議所が主催する「日商簿記」です。他にも「全経簿記」「全商簿記」などの検定がありますが、ビジネスパーソンや就職・転職においては、「日商簿記3級」からの受験が最も一般的です。
簿記3級は、会計やお金の仕組みを体系的に学びたいすべての人にとって有益な資格です。経理や事務職を目指す方はもちろん、副業やフリーランスで確定申告を自力で行いたい方にもおすすめです。
簿記3級合格のメリット
日商簿記3級の資格を取得することで得られるメリットは次のとおりです。
- 会計の基本スキルが身につく
仕訳、勘定科目、試算表の作成など、ビジネスの基礎であるお金の流れを体系的に理解できるようになります。 - 経理・財務部門への就職・転職の登竜門
多くの企業が経理職・事務職の応募条件に「簿記3級以上」を掲げており、未経験でも採用されやすくなります。 - 会計ソフト入力や事務作業にも即戦力
実務で使用される会計ソフト(弥生会計、freeeなど)では簿記知識がそのまま活用され、入力ミスの防止にもつながります。 - 副業・フリーランスにも役立つ知識
青色申告・確定申告・経費処理など、自分のビジネスの帳簿管理に直結するスキルとしても活用できます。 - 学生の就職活動でも高く評価される
文系学生が数字に強いことを証明できる資格として、多くの企業で好印象を持たれます。
簿記3級の勉強方法
簿記3級の効果的な勉強方法・独学のコツは以下の通りです。
- 仕訳のルールをしっかり理解することが第一歩
資産・負債・資本・収益・費用という5つの分類と、それぞれの増減による仕訳パターンを覚えるのが基本です。最初は覚えることが多く感じるかもしれませんが、丁寧に1つずつ理解していくことが重要です。 - 例題と問題演習で手を動かす学習を重視する
仕訳・試算表作成・精算表・伝票会計など、頻出問題を中心に繰り返し解くことで、計算力と正確性を身につけましょう。 - 電卓の使い方や時間配分の練習も忘れずに
本試験は時間との勝負でもあります。電卓の早打ち練習や、過去問・模試を使ったタイムトライアル形式の演習も効果的です。 - 独学が不安な方は通信講座や動画解説を活用
解説が丁寧な講座を利用すれば、つまずくポイントもスムーズに解消できます。特に短期間で合格したい方にはオンライン講座が便利です。
より詳しい簿記3級の勉強方法はこちら
簿記3級のおすすめ教材
簿記3級の学習には、分かりやすくて評価の高い市販教材を活用しましょう。以下は定番かつ評判の良いおすすめテキスト・問題集です。
『スッキリわかる日商簿記3級』(TAC出版)
初学者に圧倒的人気を誇るロングセラー教材。「スッキリ仕訳」といったオリジナルの解説スタイルで、複雑な仕訳も視覚的に理解できます。図解やイラストも豊富で、独学でも進めやすい構成が魅力です。
『パブロフくんと学ぶ日商簿記3級』(翔泳社)
キャラクター「パブロフくん」が登場する親しみやすい解説書。ストーリー形式で学べるため、会計が苦手な方や学生にもおすすめ。図解やストーリーによって記憶の定着を図れる設計になっています。
オンスクの簿記3級講座

忙しい社会人には、オンラインで学べる簿記講座もおすすめ。オンスクは、コストパフォーマンスにすぐれ、受け放題なので短期間で集中してインプットが可能。
ビジネス会計検定と簿記の3つの違いとは?


「ビジネス会計検定と簿記検定はどう違うの?」「どちらを先に勉強すればいいの?」という疑問は多くの初学者が抱くものです。
ここでは、学習分野・目的・知名度と難易度という3つの視点から、両資格の違いをわかりやすく比較して解説します。
学習分野が違う|「読む」ビジネス会計 vs 「作る」簿記
まず最も大きな違いは、学習する内容(分野)が根本的に異なるという点です。
ビジネス会計検定:財務諸表を「読む」力をつける
ビジネス会計検定では、「財務三表(貸借対照表・損益計算書・キャッシュフロー計算書)」を読み解き、企業の経営状況や財務体質を分析するスキルを学びます。
- 売上や利益率、自己資本比率などの指標を用いて企業の健全性を判断
- 投資判断や経営企画の資料読み取りにも活用可能
- 数字を「読む」力を重視
簿記検定:財務諸表を「作る」ためのスキルを学ぶ
一方、簿記は、売上や仕入れ、経費などの取引を仕訳し、帳簿に記録していく過程を学ぶ資格です。最終的には財務諸表を作成する力が身につきます。
- 経理処理の基本を学び、会計ソフト操作にも直結
- 仕訳・試算表・精算表・貸借対照表・損益計算書の作成
- 数字を「書く」「記録する」力を重視

つまり、「読む」ビジネス会計 vs 「作る」簿記という違いがあります。
学習の目的が違う|分析重視のビジネス会計 vs 実務重視の簿記
同じ会計分野の資格でも、学習の目的や到達点が異なります。
ビジネス会計検定は「経営を読む力」を育てるのに対し、簿記は「企業の帳簿を作成・管理する力」を育てる資格です。
ビジネス会計検定の目的:企業分析・経営戦略に役立つ
- 財務指標を用いた経営分析・企業診断に活用
- 営業職・経営企画・マーケティング職・投資家におすすめ
- プレゼン資料やIR(投資家向け説明資料)の読解にも役立つ
- 「数字に強いビジネスパーソン」を目指す方向け
簿記検定の目的:実際の経理・会計業務に直結
- 企業の日常的な会計処理を正確に記録・処理する能力が身につく
- 経理職・財務部門・事務職を目指す方には必須スキル
- 青色申告や副業・個人事業主の会計管理にも使える
- クラウド会計ソフトの操作にも有利
知名度と難易度が違う|就職に強いのはやっぱり簿記?
最後に、知名度と難易度についても確認しておきましょう。
知名度・評価は簿記検定のほうが圧倒的に上
- 簿記検定(日商簿記)は多くの企業が評価しており、就職・転職市場で非常に強い資格です
- 高校や大学、専門学校などでも広く導入されており、累計受験者数も圧倒的に多い
- ビジネス会計検定は比較的新しい資格で、主に関西圏(大阪商工会議所)を中心に普及しています
難易度も簿記の方が高い
ビジネス会計検定合格率

日商簿記3級合格率

- 簿記3級とビジネス会計検定3級は、どちらも学習時間50〜100時間程度で合格可能とされておりますが、難易度的に簿記の方が高いです。
- 簿記のほうが計算問題が多く、苦手な人にとっては「とっつきにくい」と感じる場合も
- ビジネス会計は「読む・選ぶ」問題が多いため、比較的理解しやすいという声もあります
どっちを勉強するべきか?ビジネス会計検定と簿記の選び方

「ビジネス会計検定と簿記検定、どちらを先に勉強すべき?」「自分に向いているのはどっち?」と迷っている方は少なくありません。
結論から言えば、可能であれば両方の資格取得を目指すのがベストです。それぞれの試験は性質が異なり、会計力を総合的に高めるには両方の視点を身につけることが理想的だからです。
できれば両方勉強するべき
- ビジネス会計検定では、「財務諸表を読み解く力」=会計リテラシーを習得
- 簿記検定では、「帳簿を作成する力」=会計実務スキルを習得
どちらか一方だけでは、「理解はできるが実務ができない」「実務はこなせるけど数値の意味がわからない」という偏った状態になってしまいがちです。
特に、ビジネスで数字を使った説明を求められる営業職・管理職や、副業や起業を考えている方にとっては、両方の知識をバランスよく持っていることが大きな武器になります。
ビジネス会計検定がおすすめな人はこんな人
ビジネス会計検定は、「企業の財務状況を読み取る力」や「数字から経営状況を把握する力」を身につけたい人に適しています。
「会計に苦手意識があるけど、基礎から理解したい」「数字に強いビジネスパーソンになりたい」という方には、ビジネス会計検定3級が最初の一歩に最適です。
以下のような方に特におすすめです。
営業職・管理職で数字に基づく提案力を高めたい人
- 財務諸表から顧客企業のニーズやリスクを把握し、説得力のある提案ができる
- 売上・利益だけでなく、自己資本比率やキャッシュフローも読み取れる
株式投資・企業分析に興味がある人
- 決算書やIR資料を読み解く力がつき、投資判断の精度が向上
- ROE(自己資本利益率)や営業利益率などの財務指標の理解も深まる
経理職以外で「会計の全体像」を把握したい人
- 会計や経営の基本を体系的に学びたい文系社会人
- 企画・人事・法務などの非会計系部門でも「数字の会話」ができるようになる
簿記検定がおすすめな人・向いている人
一方、簿記検定(日商簿記)は、会計の記録・帳簿の作成・仕訳処理など、実務に直結したスキルを身につけるのに向いています。
「記録・入力・帳簿管理」といった実践的なスキルを重視する方には、簿記3級が非常に有用です。
経理・会計職を目指している人
- 転職や就職活動で強力な武器になる「経理の登竜門」資格
- 上場企業・中小企業問わず、多くの求人で簿記スキルが求められる
フリーランスや副業をしている人、個人事業主
- 青色申告の帳簿付けや経費処理など、自分で会計処理を行う場面が多い
- 会計ソフト(freee、弥生、マネーフォワードなど)を使う際にも簿記の知識があると操作がスムーズ
会計ソフトを使う実務スキルを習得したい人
- 簿記の仕訳ルールを理解しておくことで、会計ソフトの入力内容の意味がわかる
- 正確でスピーディな経理作業が可能になる
勉強する順番はビジネス会計から始めるのが正解|おすすめの学習ステップ
「簿記とビジネス会計検定、どちらから勉強すればいいの?」と悩んでいる会計初心者の方には、まずはビジネス会計検定3級からの学習をおすすめします。
その理由は、簿記の学習ではいきなり「仕訳」や「勘定科目」といった専門用語やルールが登場するため、初学者にはハードルが高く、挫折しやすいからです。
一方、ビジネス会計検定は、会計の全体像を“読む力”として学ぶため、初学者でも理解しやすく、取っつきやすい内容になっています。
会計用語に慣れるならビジネス会計から始めよう
簿記3級では、「資産」「負債」「純資産」「収益」「費用」といった会計の5要素を使って仕訳処理を行いますが、そもそもそれらの用語の意味を理解していないと、仕訳自体が苦痛に感じてしまいます。
ビジネス会計検定3級では、次のような財務諸表の構造と会計用語の意味を、図や表を交えながら丁寧に学習できます。
- 売上高・営業利益・経常利益の違い
- 貸借対照表(バランスシート)の構造
- 損益計算書(P/L)の項目の意味
- キャッシュフロー計算書の見方

このように、実際の企業の決算書に基づいて会計用語の使い方を学べるため、簿記の学習にもスムーズに入っていくことができるのです。
簿記の仕訳理解には時間がかかる|いきなり始めると挫折の原因に
簿記検定では、具体的な数値を使って「仕訳」「転記」「試算表の作成」「帳簿の締め切り」など、実務的な処理手順を正確に覚える必要があります。これらは、会計の枠組みを理解していないと、単なる暗記作業になってしまい、学習効率が悪くなりがちです。
たとえば、以下のような仕訳は、会計の基礎概念がなければ理解に時間がかかるケースが多いです。
- 「備品を購入して代金は掛けとした」
- 「売掛金の回収と同時に割引を受けた」
- 「減価償却の月次処理を行った」
これらの処理も、ビジネス会計検定で“財務諸表の構造”や“会計の背景にある考え方”を理解していれば、簿記での仕訳が「なぜそうなるのか」が分かるようになるのです。
ビジネス会計検定 → 簿記検定の流れが最もスムーズ
初心者にとって、会計を学ぶベストな順番は以下の通りです。
- ビジネス会計検定3級で会計用語や財務諸表の読み方に慣れる
- 簿記3級で帳簿の作成や仕訳のルールを学ぶ
- 必要に応じて、簿記2級やビジネス会計2級へとレベルアップ
この順番で学習を進めることで、会計の理論と実務の両方をバランスよく身につけられるため、初学者でも無理なく理解を深められます。
初心者は“理解しやすさ”を重視して順序を決めよう
「数字が苦手」「文系出身で会計は初めて」「なるべく効率的に資格を取りたい」と考えている方は、ビジネス会計検定から学ぶことで、会計の世界にスムーズに入ることができます。
また、ビジネス会計検定は試験対策が比較的コンパクトで済むため、短期間で会計の基礎に触れ、自信を持って簿記学習に進むことができるのも大きなメリットです。
まとめ|ビジネス会計検定と簿記は目的に応じて選び、順番も意識しよう
ビジネス会計検定と簿記検定は、会計の学び方が異なる2つの資格ですが、どちらもビジネスパーソンにとって非常に有益です。

初心者の方には、まず「ビジネス会計検定3級」で会計の全体像や用語を理解したうえで、「簿記3級」に進むステップが最もおすすめです。
この順番なら、「読む力」と「記録する力」をバランスよく身につけられ、会計リテラシーを効率的に向上させることができます。
また、就職・転職・副業などの目的に応じて選べば、資格がより実務で活きてきます。
- ビジネス会計検定で「分析・理解力」
- 簿記検定で「実務処理力」
この2つを組み合わせることで、単なる資格取得を超えて、実践的な会計力を持つビジネスパーソンとしてキャリアの幅を広げられます。
「どちらを取るか」ではなく、「どちらから取るか」を考え、ぜひ自分に合った学習プランを立ててみてください。
ご購読いただきましてありがとうございました。